ムーがゆく

わが身が、ゆるゆると世に漂うさまを書いていゆきます。

病室の私

 おととしの事ですが、生まれて初めて入院をしました。

情けない話ですが、年に一度の健康診断にて再検査を言い渡され、検査結果表には今まで見たことのない太字で『要、再検査』と書かれているのを目の当たりにした私は不安で卒倒しそうになり、慄きながら病院に向かいました。

検査の結果、大腸内で出血しているため後日に内視鏡による精密検査をすることとなった私は、当日の朝に服用する下剤を握りしめながら帰宅。不安な日々でしたが、こうなれば医者に言われるままにするだけだと開き直って当日を待ちました。

詳しい話はアレなので省きますが、大腸内にポリープが見つかり、医師から切っておいたほうがいいと言われました。そりゃ取ってもらったほうがいいやと思っていると「切るとこのまま入院になりますがいいですか?」と念を押されて狼狽しました。放っておくと悪性のものになったりするかもと脅しておきながら良いも悪いもない気がしますが、入院というと何やらと?でもない事態になったようで少なからずビビります。しかし早めに対処しておくに越したことはありません。そのまま切ってもらいました。

そのまま病院の3階まで連れていかれ、ベッドに横になるように指示された後、今から採血と点滴をおこない 退院まで絶食だと言い渡されました。私は検査の帰りに打ち上げとしてお気に入りのラーメン屋で味噌ラーメンにネギを大森で食べる予定だったのに、なぜこうなってしまったのか?  私の車の中には簡単なお泊りグッズや着替えもあるのですが、それを取りに行く前に腕に針が刺され、止血剤を投与されました。

お腹には痛みも何もなく全然平気そうだったので帰ると言ってみましたが、「難しい」と言われただけで とりあってもらえませんでした。

明日の朝に検査をして出血などをしていなければ帰れるとのこと。どのような検査を課せられるのか、不安なまま暇な一夜を過ごしました。あまり眠れず、深夜に冷えきったロビーをウロウロしているうちに夜は明け、いよいよ検査の時間になりました。まずは採血をした後、内科の先生が現れました。ここで引っかかってしまうと また1日入院になってしまうと思うと、否が応にも緊張してきます。どんな検査が来るかと身構える私に、先生が「血便が出たりお腹が痛いことはないか」と訊いてきました。まずは質問攻めです。慎重に 大丈夫ですとハッキリ答えた私に、「では触診しますね」と手のひらでお腹のあちこちを押してきましたが、かなり強めに押しているような気がします。思わずグエッと言いかけましたが我慢。それを知ってか知らずか、「昨日切ったあたりは痛くないですか?」と訊いてきたので、別の意味で痛いですと言いかけて慌てて口をつぐむ私。「痛い」という単語を発した途端に不合格になるのではないかと思い、ひたすら無表情を装いました。抜群の演技力により、めでたく退院となった私。しばらくはおかゆなどの消化のいいものを摂るようにと指導を受けて解放。退院前に昼食を出していただけるそうで、何か特別食みたいなものかと思えば牛丼でした。これは消化にいいのか? 

たまたま銀行でおろしていた家賃で急だった入院費も支払えましたが、今回は入院が実に大変なものだとわかり、健康には気をつけようと誓った初秋でした。