ムーがゆく

わが身が、ゆるゆると世に漂うさまを書いていゆきます。

アヒルと私

 先日大阪の天満橋にいったのですが、社会人になったばかりの頃にここに浮かんでいた巨大アヒルの風船が忘れられません。

 あの時、休日に部屋でボンヤリ壁を見つめていた私に大阪の友人Bからメールが届きました。「仕事で市内に行ったら淀川あたりに遊覧船の2倍くらいあるアヒルが浮かんどっでん」と書かれていますが、何のことだかさっぱりわかりません。友人Bも競馬で負けすぎてとうとう気が触れてしまい、そのような愚劣極まりない幻を見るようになってしまったのでしょうか? 返信で早く帰って寝るように言ってやりましたが、ムキになってアヒルの実在を訴えてきます。仕方なくネットで調べてみると…いました、本当に。『水都大阪2009』というイベントのシンボルとして期間中ずっと川に浮かんでいたようです。しかし異様にデカい。それになぜアヒルなのか? というよりこれはヒヨコではないのか? さまざまな疑問に憑りつかれた私はそれを解き明かすべく、次の週末に大阪へ向かいました。

 市内の天満橋で電車を降り、階段を間違えたため遊覧船乗り場の裏から川に出ると・・・ うわ、いました。川の上にデカい尻が浮かんでいます。ちょっとありえない光景に、足が止まってしまいました。かなり笑えます。なんでやねん! これはウケを狙っているのか、それとも真面目にやっているのか、どちらなのでしょう? さすがに大阪の人のボケは半端ではありません。深いな・・・。

どうも会場の反対側から出てしまったようなので、回りこんで河岸に降りました。アヒルの正面に来ると、曇りのない、つぶらな瞳が私を見つめてきます。その癒しに満ちた波動に魅せられた私はもっとアヒルに近づきたくなってしまい、遊覧船に乗ろうと思ったのですが、私と同じようにアヒルの瞳に心を奪われた人たちが乗り場に大行列を作っていたので断念しました。無念

 のどかな休日の河岸でアヒルを眺めながら風に吹かれる私。たくさんの人たちが大笑いいながら記念撮影をしていましたが、巨大アヒルに怯えた小さな子供さんの泣き声もわりと聞こえてきます。いろんな意味でにぎやかだったあの日の水辺。アヒルさんは今、どこにいったのかなぁ?

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豆まきと私

 2月3日ほ節分の日。いろいろ思い出はありますか、今回は10年くらい前?に、たまたま日曜日と重なったので、ひと足のばして京都の節分祭に行ってきました。

やってきたのは東山の八坂神社。こちらの節分祭は祇園の舞妓さんが本堂前で奉納舞を納めた後、舞台の上から見物客に紙袋入りの福豆をまいてくれるという粋なもの。あいにくの小雨だか みぞれだかにもかかわらず、たくさんの人が詰めかけていました。

よい写真を撮ろうと本堂の正面にカメラを構えて陣取りましたが、すでにかなりの人がいたためずいぶん後ろの方になってしまいました。これではいい写真を撮れそうにありません。ふと周りを見てみると、あちこちに脚立を持ち込んでその上からカメラを構えている猛者が大勢います。ここまでするとは並々ならぬ執念。負けてたまるか!

やがて本降りになった雪の中、舞妓さんの奉納舞がはじまりました。降りしきる牡丹雪とともに舞う姿は、はっとするほど幻想的で美しく、息が止まるようでした。私の斜め前でビデオカメラを回していた外人さんも「OH...」などと言って、さかんに首を振りながら感に堪えない様子。京都に住んでいる方でも、なかなかこんなシチュエーションにはお目にかかれないのではないでしょうか? 傘をさすことは禁じられているのでじっとりと濡れてしまいましたが、白い雪が心まで清めてくれるようです。さすがは千年の王城で洗練されてきた文化。艶やかなものです。

 そしていよいよ豆まきが始まりました。途端にものすごい押しあいになり、先程までの厳かな雰囲気は一瞬にして消し飛び、阿鼻叫喚のるつぼと化しました。冗談抜きであちこちから悲鳴が聞こえてきます。豆をまく舞妓さんたちの写真を撮ろうとしていた私も後ろから圧迫されて押し潰されそうになり、そのうえ お出かけ用の革靴の上から思いきり足を踏みつけられてしまいました。OHー!! もはや収拾のつかなくなった状況の中、写真どころではなくなった私も福豆取りモードに切り替えました。舞妓さんの他にも神官の方々が豆をまいているのですが、どうせならおっさんの豆ではなく舞妓さんの豆が欲しいです。ところが非常にお上品な仕草で投げられる舞妓豆はへろへろとすぐに落下してしまい、とても後ろの方まで届きそうにありません。もっと気合い入れて投げてくれと叫びましたが無駄なあがき。結局おっさん豆すら取れずに戦いは終わり、気を取り直して買ってみた福豆付きの福引も、ハズレの缶チューハイを引いてしまいました。またこんなオチかと敗北感に打ちひしがれながら境内の隅でしょんぼり甘酒をすする私。結局この日は何ひとつ良い事がありませんでした。いつかきっと、幸せをつかんでみせます。