ムーがゆく

わが身が、ゆるゆると世に漂うさまを書いていゆきます。

レム睡眠

 ここ何年か、枕選びに凝っています。

いつも眠そうな顔をしていると言われる私。もともと寝つきが悪く、眠りも浅いうえに夜中の落雷や地震の直前にふと目が覚めてしまうナマズ体質なので、安眠するためには日頃から寝具にこだわるなどの努力が欠かせません。朝、顔を洗うたびに鏡に写る目の下のクマを見てはため息をつく毎日。わりと切実です。

せめて寝具はいいものを揃えようと、マットレスはギザギザの低反発マット、掛け布団は生協で買ってきた羽毛布団です。さらに眠る前にもくもくとアロマを焚いたり、何かに祈ったりもしていましたが、一番深く研究してきたのは枕です。

一番最初に買ったのは、かの『テンピュール』の低反発まくら。何年か前に友人の家で自慢げに見せびらかされ、その触り心地に嫉妬した私は次の日曜日に街に買いに走りました。しかし2万円ほどもすることを知って動揺してしまい、店員さんに捕まる前に逃げ出しました。しかしどうしてもあの手触りが忘れられず、悩んだ末に思い切って買ってしまいました。最初の頃は素晴らしい効果で私を夢の国にいざなってくれたのですが、だんだん慣れてきたせいか、はたまた3~4年もするとペタンコに潰れてしまったせいか、あまり効果がなくなってきたので、次なる夢の使者を探さなくてななりません。

そんなある日、『ローゼンピロー』なる枕と出会いました。「バラの香りが貴女を深い眠りに誘う」などという妖しい謳い文句にうっとりした私は、このエレガントな枕がなんとしても欲しくなってしまったのですが、バラ柄のレースふりふりの、見るからに女性的なデザインがなんとも買いづらく、ここでも散々悩んだ結果、ついにプレゼント用だと偽りラッピングまでしてもらって購入。こそこそと家に帰り、さっそくアロマパックを枕の中に入れてバラのレースに顔を埋め、うっとりと目を閉じました。しかしどうにも香りがキツく、我慢してるうちにだんだん鼻が痛くなってきたのでとても眠ってはおられず、放り投げた挙句に週末には不燃ゴミに。枕の代金4980円とプレゼント用のリボン代をまるまる無駄にしてしまいました。

そうこうしているうちに枕コレクションは10個近くなり置き場所にも困ってきたため、あまり「効かなかった」ものから処分することにしましたが、悩むのが低反発枕などの中身。燃えるのか不燃物なのかリサイクルできるのかわからなかったので、いまだに処分できず、低反発座ぶとんに格下げされて尻にひかれたりしています。

今はバスタオルを四つ折りにしたものが一番具合がよいのですが、これはタダ同然。いったい今までの出費は何だったのかと悩んだりもしますが、先日も街角で「塩まくら」なるものを見つけてしまい、しばし見つめあう私。また悪いクセがでそうです。